水の苦労
家で使う水は井戸を十数メートル掘り、その水を2トンの受水槽に受けて使用する
ことにした。
井戸ポンプが作動し、最初の20秒程度くみ上げた水は、僅かながら濁りがあり、飲料
には適さなかった。お風呂、トイレ用水には利用できた。
このお湯に浸かったときの滑らかさ、心地よさは際立っていた。手を加えてない
自然水の良さを実感させられた。
隣の沢に流れ込む湧き水をせき止め、溜まった水を黒パイプで庭に作った池に導入する
ことにした。
このやり方は最初のころはうまくいったが、大雨や雪解け水が大量に流れ込むと、
流れ込んできた土砂にパイプの口が埋まって水が流れなくなった。
このメンテナンスが大変で、自然の表流水を取水することの難しさを味わった。
堆積した土砂はほとんどが粒子の細かい粘土質で、下層は嫌気的になり、青く、鉄が
還元された状態であった。
これは再び大雨が降るとリン酸リン、アンモニア性窒素が供給されることになり、
自然界ではこのようにして下流へ肥沃な土がもたらされる。
大河川の下流域には肥沃な土地が広がり、野菜栽培に適した土地になるが、このような
現象によることが実際の体験で理解出来た。
上記のように、沢の水をせき止めて取水することを最近はあきらめている。
家から1km位上った林道脇で、崖を掘削したとき、その下から大量の水が湧き出たと
地元住民の方が教えてくれた。
早速行ってみると、そこには大量の湧水が流れ出ていた。
この水を導入することにしたのだが、勝手に水を引くことは出来なかった。
地権者の方々にお伺いを立てて許可を得てから、やっと工事を行うことができた。
村では多くの土地が水田に使用されるため、自然水を利用することは非常にナーバスで
あり、よそ者が勝手に池を作って湧水を引くことには反対の気持ちも多かったと思われる。
今更ながらよく許可を与えてくれたと思う。
水を引くのは同じ黒パイプを使用するのであるが、沢の中にパイプを敷設することで、
地主の許可を得る必要はなかった。
水の取水方法は、湧水箇所にコンクリートの溜枡を設置し、そこに溜まった湧水を黒パイプ
で導入した。この方法で非常に安定的に取水することができた。
今では、崖崩れでその溜枡が埋もれてしまい、パイプは沢のあちこちで折れ曲がったりし ているものの何とか安定して水が供給されている。
この水は大腸菌等検出されず、飲料可であったので家ではポリタンクに入れ飲料水などに
利用している。美味しい水である。
池を造る
土地の面積は約1300m2もあり、6月ともなると一面腰位まで草が伸びる。その草刈も
大変で、草刈機を使っても朝から晩までかかる。
草刈の面積を減らすため、また池があれば生態的にも面白そうなので池を造ることにした。
100m2近い池を2つ、30m2の池を1つ、10m2程度の池を1つ造った。
地元の人に頼んでバックホウで掘ってもらった。
近くの沢筋にショウブ、ヒメガマが生えていたので早速植えた。
また、カキツバタも手元にあったので、小さな池に植えた。
さらに、ジュンサイ、ガガブタ、ヒツジグサ(近郊の池に沢山生えていた)なども植え、
結構植物豊かな池となった。
水生昆虫では直ぐにマツモムシ、ミズカマキリ、ガムシ、ゲンゴロウなどが見られよう
になった。
トンボではクロスジギンヤンマ、ショウジョウトンボ、シオカラトンボ、シオヤトンボ、
オオルリボシヤンマ、アキアカネ、マユタテアカネ、キイトトンボ、オゼイトトンボ、
セスジイトトンボなどがやって来るようになり、近くではカワトンボ、オニヤンマも普通に
見られている。
カエルではアズマヒキガエルがおびただしく卵を産み、他にアマガエル、ヤマアカガエル、
シュレーゲルアオガエルも居つくようになった。
ジュンサイはその後も増え、6月頃その芽を摘んでさっと湯がいて食べるのが大きな楽しみであった。
しかし、10年程度過ぎたころ、アオサギがそれを見つけ、その嘴で根茎部分ごとつついて
とうとう全滅してしまった。
いまだアオサギを見ると何とも憎たらしく、すぐ追っ払うことが習慣になってしまった。
次から私の大きな楽しみである山の幸について書いていきたい。